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月別アーカイブ: 2025年10月

第20回型枠工事雑学講座

皆さんこんにちは!

 

沖縄市を拠点に沖縄県内で型枠解体工事を行っている

尚愛興業、更新担当の富山です。

 

 

 

脱型作業の注意点

~「固まった瞬間」から始まる品質管理~

コンクリートの打設が終わっても、現場の仕事は終わらない。
むしろ、コンクリートが固まり始めてからが本当の勝負である。

「脱型(だっけい)」――
それは、型枠という支えを外し、構造体を“独り立ち”させる工程。
この一連の作業には、力学・化学・温度・タイミング――
すべての知識が要求される。


1. 脱型のタイミング ― コンクリート強度との関係

 

脱型の時期は、「構造体が自立できる強度」に達しているかで決まる。

通常、型枠を外す際には、設計基準強度(Fc)に対して
おおよそ5〜10N/mm²程度の圧縮強度を確保することが望ましい。

ただし、これは一律ではなく、部位ごとに異なる。

部位 脱型基準強度(目安) 備考
側面型枠(柱・壁) 約5N/mm² 表面保持が目的
床型枠 約10N/mm² 自重を支える
梁下支保工 約15N/mm² 構造安全性に直結

温度が低い季節(冬期)では硬化が遅れるため、
予定より1〜2日延長するのが一般的である。


2. コンクリート硬化のメカニズムと外的要因

 

コンクリートは水和反応により硬化する。
その進行は温度と水分に強く依存する。

  • 高温時(夏季):硬化が早いが、急乾燥による表面ひび割れに注意。

  • 低温時(冬季):硬化が遅く、脱型時に強度不足が起こりやすい。

  • 高湿環境:脱型後の養生不足で表面が劣化しやすい。

打設から脱型までの間、表面乾燥を防ぐために養生シートや散水が行われるが、
養生を怠ると表層強度が10〜20%低下する例もある。


3. 脱型時の手順と注意事項

 

脱型は、ただ外す作業ではない。
外す順番と方法によって、仕上がりの美観と安全が大きく変わる。

1️⃣ 支保工を残したまま外周部から始める
 構造体を安定させるため、荷重を分散しながら部分的に外す。

2️⃣ 打継ぎ部・角部の保護
 型枠の金物が角部に接触しないよう注意。角欠け防止材を併用。

3️⃣ 振動・衝撃を避ける
 ハンマー等での叩き過ぎはNG。剥離剤が均一に作用していれば自然に外れる。

4️⃣ 脱型後の表面点検
 ジャンカ・気泡・欠け・ヒビ・剥離の有無を確認し、補修計画へ反映。


4. 脱型による応力変化と構造安全性

 

脱型は、構造体の応力状態を大きく変化させる。
それまで型枠が受けていた側圧・自重が、
瞬時にコンクリート本体に移行するためだ。

特に梁やスラブでは、
脱型直後に“たわみ”が発生する場合がある。

この初期変形を防ぐため、

  • 残存支保工を2〜3スパンに1本残す

  • 一度に全撤去せず、段階的に行う

  • 気温変化の大きい日は午後作業を避ける

といった方法が取られる。


5. 表面仕上げと再利用への配慮

 

脱型後は、仕上げ面の品質を左右する最終チェックが行われる。
気泡跡(ピンホール)・ジャンカの補修、目違い調整、角欠け補修――。
これらを丁寧に仕上げることで、最終的な外観品質が決まる。

また、使用済み型枠は再利用されるため、
取り外しの際に面材を傷つけず、金物を変形させないことも重要。
脱型時の丁寧な扱いが、そのまま次現場のコスト削減・品質維持につながる。


6. まとめ

 

🔹 脱型は構造物が自立する最初の瞬間
🔹 コンクリート強度と環境条件の見極めが不可欠
🔹 外す順序と支保工管理が品質と安全の鍵
🔹 脱型後の点検・補修で仕上げ品質を確定

コンクリートが固まり、型枠が外れるその瞬間。
そこに現れる滑らかな打ち肌には、
数多の職人と技術者の経験、判断、そして緊張が刻まれている。

脱型とは、構造物が「完成形へと目覚める瞬間」なのである。

 

 

 

次回もお楽しみに!

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第19回型枠工事雑学講座

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尚愛興業、更新担当の富山です。

 

 

コンクリートと型枠の関係

~構造物の品質を左右する「見えない器」の科学~

コンクリート構造物の完成度を決めるのは、実は打設後の見た目ではない。
その前段階――すなわち、「型枠の設計と施工精度」によってほぼ決まると言っても過言ではない。

型枠は、まだ流動性を持つコンクリートを所定の形に保持し、
硬化完了までの間に自重・振動・温度応力・側圧など、
あらゆる外力を受け止める“構造体の母胎”である。


1. 型枠の役割と要求性能

 

型枠には以下の4つの性能が求められる。

1️⃣ 形状保持性能
 設計図通りの形状・寸法・かぶり厚さを保つ。

2️⃣ 耐圧・剛性性能
 コンクリート打設時の側圧や振動に耐え、変形・漏れ・破損を防ぐ。

3️⃣ 施工性・脱型性
 組立・解体が効率的であり、表面に付着せず再利用が可能。

4️⃣ 表面精度
 打設後の仕上げ面が平滑で、美観・防水性能を確保できる。

このうち最も重要なのは「側圧への対応」。
打設時のコンクリートは1立方メートルあたり約2.3〜2.4tの重さを持ち、
内部の側圧は下部ほど強くなる。


特に高流動コンクリート(スランプフロー60cm以上)では、
液体に近い圧力がかかるため、
型枠の構造設計を誤ると、膨らみ・破損・漏れ・倒壊を招く。


2. 型枠構造の基本要素

 

型枠は単なる「板」ではない。
以下の複数の部材で構成される、ひとつの構造システムである。

  • 面材(合板・鋼板・樹脂板など):コンクリートと接する部分

  • 根太(ねだ)・大引き:面材を支える水平材

  • 支保工(パイプサポート):垂直荷重を受ける柱材

  • セパレーター・フォームタイ:両側型枠を一定間隔で固定

  • 締付金物(くさび・ボルト・ナット):型枠全体の剛性を維持

これらが一体となることで、
「面内剛性」「面外剛性」「耐座屈性能」が発揮される。


3. 型枠に作用する荷重と力学的考慮

 

型枠設計では、以下の荷重を同時に考慮する。

  • コンクリート側圧:打設高さと速度に比例して増大(p = k × h)

  • 振動による動圧:バイブレーター振動時の瞬間的圧力上昇

  • 作業荷重:作業員・器具の荷重(1.5kN/m²程度を想定)

  • 風荷重:高層・外壁型枠で考慮

  • 温度応力・水和熱膨張:大型構造物では重要

 

特に側圧は「温度」と「打設速度」に左右され、
コンクリート温度が高いほど、初期硬化が早く側圧は小さくなる。
逆に寒冷期や高スランプの場合、硬化が遅れ、
側圧が最大で設計値の1.5倍程度に増大するケースもある。

したがって、型枠設計は現場環境(季節・気温・湿度)に応じた動的な判断が必要。


4. 固定方法と剛性確保の実際

 

強度と精度を両立するためには、

  • 面材の継ぎ目をずらす「目違い防止」

  • 支柱ピッチの均一化(通常600mm以下)

  • 水平根太のねじれ防止

  • セパレーター間隔の管理
    が欠かせない。

特に、コンクリート打設時に「型枠の浮き・倒れ・爆裂」が起きる原因の多くは、
仮設段階での固定不良にある。

例えば、角部・開口部の補強を怠ると、
コンクリートの充填圧で目地が広がり、
モルタル漏れ(ジャンカ・気泡・ハチの巣)を生じる。

型枠は一度変形すると元に戻らない。
ゆえに「打設前の確認」と「打設中の監視」が極めて重要になる。


5. 表面品質と脱型後の美観

 

型枠面材の選定は、仕上がりに直結する。
合板の表面処理(メラミン・樹脂塗装など)によって、
コンクリート表面の色調・気泡・ツヤが変化する。

また、剥離剤の塗布量も品質に影響する。
厚すぎれば気泡やムラを生じ、薄すぎれば付着して脱型が困難になる。

公共建築物では「型枠面材規格(JASS 5)」に基づき、
**仕上げ区分(A・B・C)**を選定することで、
均一な外観品質を確保する。


6. まとめ

 

🔹 型枠は構造物を形づくる“力学的容器”
🔹 数トンの側圧に耐える強度と剛性が必須
🔹 現場条件(気温・打設速度)に応じた設計が重要
🔹 面材・金物・支保工の精度が仕上がりを決定づける

建築の完成美の裏には、
無数の型枠技術者の知恵と計算、そして緊張がある。

 

次回もお楽しみに!

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